こんにちは、「自己破産ドットコム」のブログを執筆している司法書士の久我山左近です。
借金の返済が難しくなり、自己破産を検討している個人タクシーの運転手さんの中には、
「自己破産すると個人タクシーの営業許可が取り消されるのでは?」
「仕事で使っているタクシーを処分されてしまうのでは?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
個人タクシーは、一般的な会社員とは異なり、自分自身で営業許可を取得し、営業用の車両を所有または使用して事業を営んでいます。
そのため、自己破産をする場合には、通常の借金問題だけでなく、営業許可や事業用車両についても慎重に検討する必要があります。
結論からいうと、個人タクシーの運転手さんが自己破産しても、一定の条件を満たせば営業を継続できる可能性があります。
ただし、営業用車両の財産価値やローンの有無などによっては、これまでどおり営業を続けることが難しくなるケースもあります。
この記事では、個人タクシー運転手が自己破産した場合の営業許可への影響、タクシー車両を残す方法、営業を継続するための注意点について、司法書士の久我山左近がわかりやすく解説します。
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自己破産そのものが直接の原因になるわけではないのです。


まず知っておきたいのは、自己破産をしたからといって、すべての職業に就けなくなるわけではないということです。
自己破産には、一部の資格や職業について一時的な制限が生じる制度があります。
例えば、警備員や保険募集人などは、破産手続開始決定を受けて復権するまでの間、法律上の制限を受ける場合があります。
それでは、個人タクシーの運転手はどうなのでしょうか。
自己破産だけで営業許可が当然に取り消されるわけではない
個人タクシー事業は、道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受けて営業するものです。
現行の道路運送法第7条では、自己破産したこと自体は、事業許可の欠格事由として規定されていません。
したがって、自己破産を申し立てたり、破産手続開始決定を受けたりしただけで、当然に個人タクシーの営業許可が取り消されるわけではありません。
ただし、事業許可には道路運送法に基づくさまざまな条件があります。
自己破産に伴って営業所や車庫、車両などの事業継続に必要な条件を満たせなくなった場合には、営業に影響が生じる可能性があります。そのため、実際に自己破産を申し立てる前に、管轄の運輸局や運輸支局に確認しておくことが大切です。
第二種運転免許も自己破産だけでは取り消されない
個人タクシーを営業するためには、普通第二種運転免許などの必要な運転免許を保有していることが前提となります。
しかし、自己破産したこと自体は、第二種運転免許の取消事由ではありません。
そのため、自己破産によって直ちにタクシーの運転ができなくなるということもありません。
自己破産すると営業用のタクシー車両は処分される?
個人タクシーの運転手さんが自己破産する場合、営業許可以上に大きな問題となるのが、営業用車両の取扱いです。
個人タクシーは、営業用の車両がなければ仕事を続けることができません。
しかし、自己破産では一定以上の価値がある財産が換価され、債権者への配当に充てられる場合があります。
営業用のタクシー車両も例外ではありません。
ローンを完済しているタクシーの場合
営業用車両のローンを完済しており、運転手本人が所有している場合、その車両は原則として本人の財産として評価されます。ここで重要になるのが、車両の現在の査定額です。
例えば、長年使用している車両で中古車としての価値が低ければ、換価対象とならず、そのまま使用できる可能性があります。一方、比較的新しい車両や高額な車両の場合には、破産管財人によって売却される可能性があります。
なお、東京地方裁判所の破産実務では、自動車の処分見込価額が20万円以下であるかどうかが、財産の取扱いを判断する一つの目安になります。ただし、20万円という金額は全国一律の法律上の基準ではなく、裁判所の運用によって取扱いが異なります。
ローンを完済しているからといって、必ず車両を残せるわけではない点に注意しましょう。
ローンが残っているタクシーの場合
営業用車両のローンが残っている場合には、さらに注意が必要です。
自動車ローンの契約に所有権留保が付いている場合、ローン会社が車両の引渡しを求める可能性があります。
もっとも、所有権留保の対抗要件などによって取扱いが異なる場合もあるため、契約内容や車検証上の所有者を確認する必要があります。また、特定のローン会社だけに返済を続けることは、偏頗弁済として問題になる場合があります。
自己破産を検討している段階で、安易に車両ローンだけを優先して返済することは避けましょう。
営業用タクシーを残すための自由財産の拡張とは?
自己破産をしても、生活に必要なすべての財産を失うわけではありません。
破産法では、破産者が生活を再建できるように、一定の財産を手元に残すことが認められています。
これを「自由財産」といいます。
さらに、個別の事情によっては、裁判所が自由財産の範囲を広げることがあります。
これが「自由財産の拡張」です。
個人タクシーの営業車両も対象になる可能性がある
破産法第34条第4項では、裁判所が破産者の生活状況、収入を得る見込み、財産の種類や額などを考慮して、自由財産の範囲を拡張できると定めています。
個人タクシーの運転手さんの場合、営業車両は単なる移動手段ではなく、生活費を得るための重要な事業用財産です。
例えば、次のような事情があれば、自由財産の拡張を検討する材料になります。
- 個人タクシーが唯一の収入源となっている。
- 車両を失うと事業を継続できなくなる。
- 営業を続けることで安定した収入が見込める。
- 車両を残すことが経済的な再生につながる。
- 車両の査定額が比較的低い。
ただし、これらの事情があれば必ず自由財産の拡張が認められるというわけではありません。
車両の価値やその他の財産、債権者の利益なども考慮して判断されます。
自由財産の拡張が認められない場合は?
自由財産の拡張が認められない場合には、車両が換価される可能性があります。
その場合、破産管財人との協議により、第三者が適正な価格で車両を買い取る方法などを検討できることがあります。ただし、車両を親族名義に変更して財産を隠したり、実際の価値より著しく安く譲渡したりすることは、財産隠しや否認権の問題につながるおそれがあります。
自己破産を申し立てる前に、勝手に名義変更や売却をすることは避けてください。
個人タクシーの自己破産は管財事件になる?
個人タクシーは個人事業主として営業しているため、自己破産の際には事業に関する財産や取引関係の調査が必要になる場合があります。そのため、会社員の自己破産と比較して、管財事件として扱われる可能性があります。
ただし、個人事業主だからという理由だけで、必ず管財事件になるわけではありません。
裁判所は、財産の内容や事業の状況、調査の必要性などを踏まえて判断します。
管財事件になった場合には、破産管財人が財産の調査や管理、換価などを行います。
営業用車両の処分や事業の継続についても、破産管財人との調整が必要になることがあります。
特に、事業を継続しながら自己破産する場合には、営業収入や経費、事業用口座、売掛金などの取扱いを明確にしておくことが重要です。
個人タクシー運転手が営業を続けるための3つのポイント
① 営業車両の査定額を確認する
まずは、営業用車両の現在の価値を確認しましょう。
車種や年式、走行距離、車両の状態によって査定額は大きく異なります。
タクシーは一般的な自家用車と比べて走行距離が長くなる傾向がありますが、走行距離だけで価値が決まるわけではありません。客観的な査定資料を準備することが重要です。
② 営業収入と経費を明確にする
自己破産後も営業を続けるためには、事業として十分な収入を確保できるかどうかが重要です。
売上だけでなく、燃料代、車両整備費、保険料、車庫代、組合費などの経費を差し引いた実際の収入を確認しましょう。また、個人タクシーの組合に加入している場合には、出資金や預託金などが財産として評価される可能性もあります。
③ 申立て前に営業継続の方針を検討する
個人タクシーの運転手さんにとって、営業車両を失うことは収入源を失うことにもつながります。
そのため、自己破産の申立て前から、車両を残せる可能性や営業を継続する方法について検討しておく必要があります。必要に応じて、管轄運輸局への確認や、裁判所・破産管財人との調整を行うことが重要です。
自己破産以外に個人再生や任意整理という方法もある
営業車両の価値が高く、自己破産では車両を残すことが難しい場合には、個人再生や任意整理も検討しましょう。
個人再生は、裁判所の手続きを利用して借金を一定の範囲まで減額し、原則3年間、事情によっては最長5年間で返済していく制度です。継続的な収入があり、再生計画に従って返済できる見込みがあれば、個人タクシーの営業を続けながら借金問題を解決できる可能性があります。
また、任意整理は債権者と個別に交渉して、将来利息のカットや返済条件の変更などを目指す方法です。
ローンを完済した営業車両を所有している場合には、個人再生や任意整理によって車両を維持しやすくなるケースもあります。ただし、個人再生では清算価値保障原則により、車両の価値が最低弁済額に影響することがあります。
どの手続きが適しているかは、借金の総額、収入、車両の価値などを踏まえて判断する必要があります。
まとめ:個人タクシー運転手は自己破産後も営業を続けられる可能性がある!
個人タクシーの運転手さんが自己破産しても、それだけを理由として当然に営業許可や第二種運転免許が取り消されるわけではありません。
しかし、営業用車両に一定の財産価値がある場合には、破産手続によって処分される可能性があります。
そのため、営業を継続したい場合には、車両の査定額を確認し、自由財産の拡張などによって車両を残せるかどうかを検討することが重要です。
また、自己破産以外にも、個人再生や任意整理によって借金問題を解決できる場合があります。
大切なのは、借金を整理することだけでなく、自己破産後も収入を確保して生活を立て直せるようにすることです。
個人タクシーの営業を続けながら借金問題を解決したいと考えている方は、自己破産の申立てをする前に、債務整理に詳しい司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
今回のブログ「個人タクシー運転手が自己破産すると営業を続けられるの?詳しく解説します。」のテーマの解説は以上になります。
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それでは、司法書士の久我山左近でした!












