こんにちは、「自己破産ドットコム」のブログを執筆している司法書士の久我山左近です。
「自己破産すると、将来も親の遺産を相続できなくなるの?」
「自己破産を申し立てる前に父が亡くなったけれど、遺産はどうなる?」
「破産手続中に親が亡くなったら、相続した財産も債権者への返済に使われる?」
自己破産を検討している人にとって、親の相続は気になる問題のひとつです。
結論からいうと、自己破産をしたからといって、親の遺産を相続できなくなるわけではありません。
自己破産をしても相続人としての資格を失うわけではないため、その後に親が亡くなれば通常どおり相続人になることができます。
ただし、注意しなければならないのが「親がいつ亡くなったのか」です。
親が亡くなったのが破産手続開始決定の前なのか後なのかによって、相続財産の取り扱いが大きく変わります。
今回は、自己破産と親の遺産との関係について司法書士の久我山左近がわかりやすく解説します。
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「自己破産すると親の遺産まで全部取られる」ということではありません。


まず知っておきたいのが、自己破産をしても相続人としての地位を失うことはないということです。
たとえば父親が亡くなり、子どもが相続人になったとします。
その子どもが過去に自己破産していたとしても、それだけを理由に相続できなくなることはありません。
自己破産によって借金の支払義務について免責を受けたとしても、親子関係がなくなるわけではなく、法律上の相続人であることにも変わりはありません。
そのため、「一度自己破産したら一生財産を持てない」「自己破産した人は親の遺産を相続できない」ということではありません。
問題となるのは、自己破産の手続と相続が同じ時期に重なった場合です。
重要なのは「破産手続開始決定」の前か後か
自己破産と相続の関係を考えるうえで、非常に重要なのが破産手続開始決定日です。
「自己破産を申し立てた日」が基準になると思われがちですが、原則としてそうではありません。
破産法では、破産者が破産手続開始時に有する財産は、原則として破産財団に属するとされています。
一方、破産手続開始後に新しく取得した財産は「新得財産」と呼ばれ、原則として破産者が自由に管理・処分できます。親の相続についても、この考え方が重要になります。
親が破産手続開始決定「前」に亡くなった場合
たとえば次のケースを考えてみましょう。
4月1日 父親が死亡
↓
5月1日 自己破産を申立て
↓
6月1日 破産手続開始決定
このケースでは、父親が亡くなった時点で相続が開始しています。
民法では、相続は被相続人の死亡によって開始します。したがって、まだ遺産分割協議をしていなかったとしても、
相続によって取得する財産上の権利が存在するため、原則として破産手続との関係で処理する必要があります。
「まだ遺産を受け取っていないから破産とは関係ない」とは限らないので注意しましょう。
自己破産申立て後に親が亡くなった場合も注意
もうひとつ注意したいのが、自己破産申立て後、破産手続開始決定前に親が亡くなったケースです。
たとえば、
4月1日 自己破産を申立て
↓
4月20日 母親が死亡
↓
5月10日 破産手続開始決定
というケースです。
「自己破産を申し立てた後に母が亡くなったのだから、遺産は自分のものにできるだろう」と思うかもしれません。
しかし、基準となるのは原則として申立日ではなく破産手続開始決定日です。
このケースでは母親が亡くなったのが破産手続開始決定前なので、相続によって取得する財産は破産手続との関係で処理する必要があります。
自己破産を申し立ててから開始決定が出るまでに相続が発生した場合には、速やかに自己破産を依頼している弁護士または司法書士へ報告しましょう。
破産手続開始決定後なら親の遺産は原則として自分の財産
それでは、次のケースならどうでしょうか。
4月1日 自己破産を申立て
↓
5月1日 破産手続開始決定
↓
6月1日 父親が死亡
この場合、父親が亡くなったのは破産手続開始決定後です。
したがって、相続によって取得した財産は原則として新得財産となり、破産財団には入りません。
たとえば、破産手続開始決定後に父親が亡くなり、相続によって500万円の預貯金を取得した場合でも、原則として
その500万円を破産管財人へ引き渡して債権者への配当に充てる必要はありません。
これは自己破産に対する大きな誤解のひとつです。
自己破産は、破産した人が将来取得するすべての財産を取り上げる制度ではありません。
破産手続開始後に得た給与などと同じように、その後に発生した相続によって取得した財産も原則として本人の財産となります。
免責許可決定前に相続しても大丈夫?
「破産手続開始決定は出ているけれど、まだ免責許可決定が出ていない」というケースもあるでしょう。
ここでも重要なのは、基本的には免責許可決定日ではなく破産手続開始決定日です。
たとえば、
破産手続開始決定
↓
父親死亡
↓
遺産を相続
↓
免責許可決定
という順番であれば、免責許可決定前に相続が発生していても、原則として相続財産は新得財産として扱われます。
したがって、「免責が確定するまで親の遺産を相続できない」というわけではありません。
親がまだ生きている場合の財産はどうなる?
自己破産を検討している人の親が、不動産や多額の預貯金を所有しているケースもあります。
たとえば、
父親:自宅5,000万円+預貯金3,000万円
子ども:借金700万円で自己破産予定
だったとしましょう。
父親が健在であれば、8,000万円の財産はあくまで父親の財産です。
将来、子どもが相続する可能性があるとしても、現時点では子どもの財産ではありません。
したがって、単に「将来親から財産を相続する予定がある」というだけで、親の財産が子どもの自己破産によって処分されることはありません。
そして破産手続開始決定後に親が亡くなった場合には、前述したとおり、その相続によって取得した財産は原則として新得財産となります。
自己破産前に相続放棄すれば遺産を守れる?
ここは慎重な判断が必要です。
たとえば父親が亡くなり、自分が500万円を相続できることになったものの、「どうせ自己破産したら債権者への配当に回る。それなら相続放棄して兄弟に相続してもらおう」と考えるケースです。
しかし、自己破産と相続が重なっている場合には、通常の相続だけを考えて手続を進めるのは危険です。
特に、相続開始後に破産手続開始決定を受け、その後に相続放棄をする場合には、破産法上の特別な規定があります。
破産法238条では、破産手続開始前に相続が開始していた場合、破産手続開始後に破産者がした相続放棄は、破産財団との関係では原則として限定承認の効力を有するとされています。
つまり、「相続放棄をすれば、相続財産を破産手続から外せる」と単純に考えることはできません。
自己破産と相続が同時期に発生している場合には、相続放棄をする前に専門家へ相談することをおすすめします。
遺産分割で「自分は何も相続しない」とすればいい?
相続放棄ではなく、遺産分割協議によって自分の取り分をゼロにする方法を考える人もいます。
たとえば、
父親の遺産 2,000万円
兄 自己破産予定
弟 借金なし
というケースで、「兄は何も相続せず、弟が2,000万円すべてを相続する」という遺産分割を行うケースです。
しかし、自己破産を予定している人が、本来取得できる可能性のある財産を意図的に他の相続人へ渡すような遺産分割をすると、破産手続上の問題が生じる可能性があります。
相続放棄と遺産分割協議は法律上まったく同じものではありません。「相続放棄が認められるなら、遺産分割で0円にしても同じだろう」と自己判断しないようにしましょう。
特に破産申立て直前や申立て後に相続が発生している場合には、遺産分割協議書へ署名する前に、破産手続を担当する専門家に相談することが重要です。
相続したのが不動産だった場合は?
親から相続する財産は現金や預貯金だけではありません。
実家や土地、マンションなどの不動産を相続するケースもあります。
破産手続開始決定前に親が亡くなり、不動産について相続分を有している場合には、その持分も財産として評価される可能性があります。
まだ相続登記をしていないからといって、自己破産と無関係になるわけではありません。
反対に、破産手続開始決定後に親が亡くなって取得した不動産であれば、原則として新得財産になります。
そのため不動産についても、登記をした日より「いつ相続が開始したのか」が重要になります。
自己破産と相続では「親が亡くなった日」を確認しよう
自己破産と相続が重なった場合には、次の日付を時系列で確認すると分かりやすくなります。
- 親が亡くなった日
- 自己破産を申し立てた日
- 破産手続開始決定日
- 遺産分割協議をした日
- 免責許可決定日
なかでも特に重要なのが、「親が亡くなった日」と「破産手続開始決定日」の前後関係です。
基本的な考え方を整理すると、
親の死亡 → 破産手続開始決定
= 相続財産は原則として破産手続の対象になる
一方、
破産手続開始決定 → 親の死亡
= 相続財産は原則として新得財産になる
という違いがあります。
まとめ|自己破産しても親の遺産を相続できなくなるわけではない
自己破産をしたからといって、親の遺産を相続できなくなるわけではありません。
自己破産をしても親子関係や相続人としての地位は変わらないため、親が亡くなれば通常どおり相続人になることができます。
ただし、自己破産と相続が同じ時期に発生した場合には注意が必要です。
特に重要なのが、破産手続開始決定前に親が亡くなったのか、開始決定後に亡くなったのかという点です。
破産手続開始決定前に相続が開始していれば、相続財産は原則として破産手続との関係で処理する必要があります。
一方、破産手続開始決定後に親が亡くなった場合には、相続によって取得した財産は原則として新得財産となり、自分の財産として保有できます。また、自己破産直前の相続放棄や「自分は何も相続しない」という遺産分割については、破産手続上の問題が生じる可能性があります。
自己破産の前後に相続が発生した場合には、自分だけで相続放棄や遺産分割を進めず、破産手続と相続の双方を踏まえて専門家へ相談することが大切です。
今回のブログ「自己破産すると親の遺産は相続できる?相続と自己破産の関係を詳しく解説!」のテーマの解説は以上になります。
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それでは、司法書士の久我山左近でした。












